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MULTILATERAL AND ASSOCIATIVE & RESEARCHFRAGMENTATION OF CONTEXT

多角的・連想的調査と文脈の断片化

本企画は、人がこれまでに与えた役割、そしてこれから与えるであろう新たな役割、この双方が存在しない状態の“純粋なるモノ”を探し出すことから始まった。言い換えれば、人に使われることがなくなった状態で存在している物体を、改めて拾い集めるということである。

まず対象としたのは、京島にある旧お米屋さんの旧小倉屋である。この建モノは昭和30年代に建てられたが、家族や商売の形態の変遷に伴い、母屋・店舗・倉庫と数回に渡って増改築を重ね、数年前からは誰も住むことなく空き家となっていた。そして、この建モノの中には、多くのモノ達がひっそりと佇んでいたのである。また、旧小倉屋を中心とした京島地区にもその範囲を広げ、幾つかのモノを拾い集めてきた。

次に、拾い集めてきたモノそれぞれに対して、その出自やかつての役割などを、かつての使用者やその周辺で関わった人などから聞き取り調査を実施。またそこから派生するように、そのモノの一般的な謂れや歴史、それにまつわる小噺や物語などの調査、更にはダブルミーニング的手法によって連想的に調査の輪を広げていった。調査方法を多角的に、そして連想的にすることにより、時の経過を孕んでいるモノはもちろん比較的新しいモノについても、そこから様々な文脈を見つけ出すことを試みた。

最後に、こうして得られたモノにまつわる文脈を、ぶつ切りのキーワードとして断片的な情報へ還元し、モノと共に、次の段階である「即興的発声」に向けてのアーカイブとした。